コラム

ゼロから始めるソロキャンプ その⑥手練れソロキャンパー(ヒロシさん)にアドバイスをもらう

着火する際に知らなければならない「火」の基本

 

2回のソロキャンプを終えたところ、テント設営についてはなんとか形になりましたが、焚火については、炭を使ったのにも関わらずうまく火を起こすことができませんでした。
ということで、2020年ユーキャンの流行語大賞にて、「ソロキャンプ」で受賞した直後のヒロシさんにアドバイスをうかがいました。
◇    ◇    ◇    ◇
ーーまずは、流行語大賞の受賞おめでとうございます。

ヒロシ ありがとうございます。でも、「ソロキャンプ」って、僕の持ちネタでもなんでもないですからね。おめでとうといわれても、ちょっとわからないです。

ーーそれでさっそく本題に入るのですが、10月に2回目のソロキャンプをやってきました。

ヒロシ はい。記事は読みましたよ。緑色のシートでタープ張りみたいなことやっていましたよね? 迷彩じゃないやつで。
あれ、「カーキ色だからキャンプに使えるんじゃないか?」って思って買ったわけでしょ?

ーーはい。かっこいいかなと思って買いました。

ヒロシ 何百円かで、それを選んで、買って、使うというワクワクを楽しめたわけですよね。もうそれでいいと思うんです。もし、僕が使っているDDハンモックスのDDタープを勧めて買わせていたら、その選んで、買って、使うという楽しみを奪っていたわけですから。ソロキャンプでいえば、僕の装備を買っておけば間違いないと僕自身は思っていますけど、それって、僕がキャンプギアを個人的に1つ1つ試して、5、6年かけて今の形にたどり着いただけの話ですから。ソロキャンパー皆の答えとかではないんです。

だから、今からソロキャンプ始める人は、僕のも一例として参考にしてもいいですが、最終的にはキャンプギアも自分で選んでいく工程そのものを楽しんでほしいです。そういう意味でカーキのシートを選んで買って使ったのはとてもいいと思います。

ーーありがとうございます。ただ、記事を読んでいただいたらわかると思うのですが、焚き火が全然うまくいかなかったんです。

ヒロシ はい。ご飯も結局、固形燃料でやったってやつですよね。

せっかく焚火台を買ったのに……。

ーーそれで、結論としては、炭と着火剤より、炭になる前の薪とかを使ったほうがよかったのかなぁ、と思ったんですけど……。

ヒロシ いやいや、炭と着火剤で全然できますよ。あれは、やり方がダメだったんです。
まず1点目は着火剤にマッチをつけるところの写真を見てわかりました。

これですか?

ヒロシ よく見てください。マッチの火って上下どちらに向かっていますか?

ーーえ? ちょっといわれていることがわからないです。

ヒロシ マッチをつけると、火って、自然と上に向かう、上がっていくじゃないですか。でも、これ、マッチを上から着火剤に近づけていますよね。つまり、マッチの下に着火剤が来てしまっているのが問題なんです。これじゃ、火が着火剤につきにくいんですよ。

これ多分、僕みたいな喫煙者とかだとあまり間違わないと思うんですが、禁煙者の方だとあまり日常で火をつける行為に慣れていないので、けっこう間違えちゃうのかもしれません。火って使い慣れていないと怖いですしね。

ーーなるほど! たしかに火に慣れていなくて怖かったっていうのはありますね。これ本当に火をつけるのに30分かかったんですよ。写真撮りながらだったから多少もたついたのはあるんですけど。

ヒロシ ですから、これ、着火剤を先に炭の下にセッティングしていますが、まずは着火剤を左手に持つじゃないですか? そして、その下から右手で火がついたマッチを近づければ、マッチ1本で着火剤に火がつけられますよ。

しかも、これは慣れないうちは火傷を防ぐためにも皮の手袋をしてやってほしいのですが、火が着火剤についたら、すぐに焚火台に投げ込まずに、着火剤全体に火が回るように、炎が上にいくということを頭に入れながら、火を着火剤で少し大きく育ててあげるんですね。それから焚火台に置いて、その後に炭を置いていくんです。

ーーなるほど。すごく具体的なアドバイスで参考になりました。そういう基本が、全然わかっていなかったです。

木目に沿って火が走ることを意識しよう

ヒロシ それで2点目は、これは記事でもご自身で気がついていましたが、炭をあのように積んでしまうと、空気が触れる面積が少なくなってしまうのが問題でした。

あと、火が炭につくと、木の木目に沿って火が走りやすい、ということも頭に入れておくといいと思いますよ。火が広がっていくときは無秩序に広がるんじゃなくて、木目に沿って行きやすい。そういうのを考えたうえで、炭を置いて、そして、炭の燃焼を連鎖させていかなければならないです。

ーーでは、炭が足りないわけじゃないんですか?

ヒロシ ええ。量の問題ではないです。あれで十分足りています。結局、着火剤の端の一部にしか火がついていない状況から始めてしまっているから、うまく炭全体に火が広がらなかったんです。

火がつかない理由がわかりました!

ヒロシ あと、やはりこれもご自身で気がついていましたが、炭とうなぎの間が、空きすぎです。

やっぱり!

ヒロシ 火から網までの位置がありすぎるんですね。あの、これは本家のピコグリルもすごく高いんですよ。だから、僕なんかも直接鉄板を火の上に置いたりしていますね。

ただ、今回は炭全体が燃えていないという問題がいちばんですけどね。

ーーあの、炭よりも薪から始めたほうがいいかな、と思ったんですけど?

ヒロシ う~ん、でもうなぎは専門店でも炭で焼いていますよね? もし薪からやりたいならば、たとえば、薪が燃える段階でご飯を炊いて、炭になってからうなぎを焼く、とかですかね?

ーーそれは、ちょっと格好よさそうですね笑

ヒロシ あと、ご飯を焚火で炊くのもそこまで簡単なわけじゃなくて、最初はある程度の火力を使いたいんですが、途中からはある程度おさまった火も使いたいんです。火が強すぎると、僕も飯盒を端にどかしたりしますからね。ソロキャンプに慣れている人は、焚火台に、弱火、中火、強火のコーナーを作る人もいます。左はガンガン燃える場所にして、右は炭火でじっくり燃えるコーナーにするとか。

ーーそこまでいくと、手練れソロキャンパー感が出ますね。

ヒロシ ええ。ただ、今回はその前に、火が上に行くことを知らないのがまずかったです。それに、薪に火をつけるのだって、けっこう難しいですからね。
あとは、12月になってからキャンプするなら、多分今のままだと軽装すぎるので、しっかりした寝袋を用意するのと、あとはテントをフルクローズにするとか、もしくはハンモック泊を目指すのか、など、もっといろいろ考えたほうがいいと思います。

ーーはい、ありがとうございました。

ヒロシ あと、流行語大賞の受賞はもう少し褒めてくれても……。

ーーあ、いや、そこは本当におめでとうございます!笑

(文・写真/中野一気)