コラム

穴あきマットを使ってみた⑧


 
マットは寝袋の下に敷くもの。これが一般的な使い方です。
 

マットと寝袋の相性によりますが、ちょっと斜めになっている地面では、いつの間にかマットから落ちて寒さに目覚める。これもキャンプのあるあるです。
 

ところが10年ほど前より、寝袋の中に入れるというちょっと変態的使い方のマットが登場しています。穴がいっぱい空いていることで体を支えつつ、体重で潰れてしまう寝袋の背中のロフトをキープし、保温力を高めるというものです。
 
 
 

普通のエアマットとは違い、穴がいっぱい。日本で現在購入できるのは、イナーシャXフレームとそれよりも短いイナーシャXライト、そして小さめの丸い穴がたくさんくり抜かれているイナーシャオゾン。
 
どれもコシのある素材ですが、たっぷり肉抜きされているので枕付きのオゾンで354g。Xフレームはさらに100g軽い258gという軽さを誇っています。極薄素材の軽量エアマットとさほど変わりません。
 

ふくらませるとこんな感じ。
一般的なエアマットのレギュラーサイズと変わらない、頭から脚先までカバーする長さですが、息を吹き込む量は格段に違いました。ポンプなしでもこれなら楽。
 
試しにこのまま寝転がってみたところ、普通に寝転がっている分には、肉抜き部分が体に当たることはありません。ただ、肘や膝を着くとほかのエアマット同様底づきします。というよりも地面に当たります。
 
これで大丈夫なの? 不安に思いながら寝袋の中にいれてみました。
 

マミー型寝袋にぴったりおさまります。ストレッチタイプの寝袋だからでしょうか、中に入っても窮屈な感じはしないし、当然ですが寝袋から落ちることもなし。
それに、狭い車内や小型テントで寝袋に潜り込むとき、背中がクシャッとしてうまく寝袋に入れないことがありますが、マットを中に入れると平らをキープ。寝袋に入りやすいんです。
 
気になる寝心地ですが、エアマットらしい反発力は控えめ。そして寝袋のロフトが潰されないので、あたたかく感じます。
 
ただ、上向きに寝る分にはいいのですが、横向きになると肘はマットがないので冷たい。膝もやや曲げにくいので、横向きで寝る人はちょっと窮屈で恩恵を受けにくいかもしれません。
 
寝袋の中ですんなり寝返りを打てばいいんですが、体格と別メーカーのものだからでしょうか、意識しないと寝袋の中で体の向きをかえるのはちょっと厳しく感じました。
 
そこでオゾン単独ではなくクローズドセルマットと併用したところいい具合。ゴロゴロ寝返りを打っても大丈夫です。オゾンに限らず、エアマットは圧着部分のエア漏れが不安ですが、クローズドセルマットと組み合わせておけばなにかの拍子にエアが漏れたときもなんとかなりそう。
 
試しに穴なしの一般的なエアマットをいれてみたところ、悪くないのですが蒸れやすく感じました。やはり肉抜きエアマットは、「寝袋の中に入れる」ことを前提として開発されただけあります。
 

もしやと思って、今度はハンモックで使ってみました。
 
アンダーキルトほどではありませんが、寝袋のロフトが完全に潰れるわけではないのでぬくぬく。残念ながら廃盤となったサーマレストのハンモックウォーマーとくみあわせれば、まだ肌寒いこの時期もかなりいい感じで眠れます。
 
 
決してかわいいとはいえない値段ですし、ほかのメーカーにはない構造のため種類を選べないのでおすすめしづらいのですが、寝心地が好みであれば、軽さと温かさが両立した“使える”マットでした。
 


大森弘恵
フリーランスのライター。記事のテーマはアウトドア(おもにファミリーキャンプ)、旅行、ときどき料理。バイクキャンプ、ツーリング、雪遊び好き。