千葉県の穴場キャンプ場で初の冬ソロキャンプ決行!
前々回の記事で、昭島の「モリパークアウトドアヴィレッジ」で、テントのツーリングドームST(2021年新カラー)とインフィニティチェアを購入したこと、そして、前回の記事で、その後、立川のビックアウトドアで思いがけずに「バウルーBW01」を予約購入できたことをレポートしました。実店舗は本当に最高ですね。
しかし、この後も、初の冬ソロキャンプをするために、いくつか購入したものがあります。ルポの前にそちらを紹介させていただきます。
まず、立川のビックアウトドアをもう1度訪れました。寝袋(シュラフ)カバーを買うためです。寝袋を雨水や結露から守ってくれるうえに、保温性まで高めてくれるキャンプ道具です。
自分が持っている寝袋は、2012年前後に1万円弱で買った、コールマンのタスマンコンパクトX/0というもの。
0度以上でも大丈夫とうたっている商品です。しかし、ヒロシさんは本で、「冬キャンプ用に『マイナス35度対応』とうたった安い中国製の寝袋を購入したが、死ぬかと思うほど寒かった」といわれておりました。なので1万円と寒冷用の割には破格で買えたものだと、厳冬の夜を越えるのは厳しいのではないか、と思ったからです。
ビックアウトドアに電話で聞いたところ、「NANGAのアソートのシェラフカバーなら、1つだけですが在庫あります。色? 黒ですね」とのこと。値段は税込6630円。さっそく、翌日午前中に買いにいくことを約束。購入しました。
次に買ったのが、湯たんぽ代わりにするもの。ヒロシさんは、パスファインダーのカンティーンクッキングセットの水筒を、寒いときにカバーに入れて湯たんぽ代わりに使うといわれています。なので、同じような用途で使えるものがないか、とビックアウトドアで探しましたが、見つけることができず……。
そこで、ネットの海をさまよったところ、ステンレス製のスキットルなるものをアマゾンで見つけました。洋画で無頼なアル中男が、片手で酒を飲む際に使っている、アレですね。
1年を通して、合計飲酒量がジョッキ一杯分にも満たない下戸なのですが、コンプレックスからか、お酒周りの道具に異様に惹かれるんです。200mℓのものが2つセットで税込1799円(送料込み)だったので、これをポチりました。
ただ届いたものを見てみると、かなり薄く、お湯を入れても30分も経たないうちに冷めちゃうんじゃないか、と予想できました。さらに、キャップ部分にステンレス製ではないパッキン的な白い何かを発見。
これだと、水を入れてこのまま炎の中に打ち込む、という使い方は残念ながらできません。なので、沸かしたお湯をここに注ぐしかないですね。使えなかったら、お茶とか入れて水筒がわりにでもしようと思います。
あとは耳あてのある帽子です。
結論からいうと、これは買って正解でした。寒い中で耳が暖かいだけでこんなに快適だとは。中野駅の帽子専門店mocopocoで税込1800円。mocopocoはCA4LAとかで買うと4000円くらいしそうな帽子が半額以下で買える超優良店です。
ということで、準備万端、冬ソロキャンプに向かいました。
◇ ◇ ◇ ◇
向かった先は、千葉県の市津湖近くにある勝古沢キャンプ場です。「カッコザワ」と読みます。ヒロシさんのキャンプ地の探し方は『ヒロシのソロキャンプ』を参考にしてほしいですが、今回はグーグルマップで、評価数が少ないところを選びました。
コメントを見ても「最近流行りの高規格なキャンプ場ではないけど」「未整備の林や急斜面だらけなので子連れでキャンプするのは(略)オススメしません」と、ソロキャンパーにとってそそられる文言が並んでいます。
なお、ボットン便所ということで、女性はほぼいないだろうと推測。評価数は少ないですが、それぞれの評価はわりかし高い状態でした。
ちなみに、電話で確認したところ、
・直火で焚き火が可能
・薪も無料で使い放題
・ハンモックも張れる
という、ソロキャンパーにとって夢のような環境なんです。一方、料金がソロだと1泊合計3000円(利用料+ソロテント料)。けっこう財布にきついのですが、「これならさらにお客さんが来ないんじゃないか」と、逆に期待を膨らませました。
キャンプ場の前に寄ったのは、蘇我インターチェンジを降りて10分ほどのところにある、ベイシアちば古市場店。
東京から向かう際は、ここがいちばん寄りやすい大きなスーパーのようです。自分は平日に向かいましたが、駐車場も813台あるので、土日でもなんとか入れるのではないかでしょうか。
事前に東京の100均ショップで買ったのは以下です。
夜はおでんカレーにしようと決めていました。漫画『ゆるキャン△』の中で、犬山あおいが、残ったおでんの汁でカレーを作ることがある、みたいなことをいっていた気がします。それが気になっていたので、今回の初の冬ソロキャンプで自分もやってみようと。
ベイシアで買い足したのは、以下です。
・昼食用 しゃぶしゃぶ用肩ロース肉、葉物野菜のグリーンカール、おにぎり(しゃけ)、おにぎり(オムライス)
・おやつ・夜食用 地元千葉県産のさつまいも・べにはるか、焼き芋をするためのアルミホイル、バナナ、フィッシュアーモンド、いかくん(ソフトいか)、貝ひも
・夕飯用 おでんカレーの肉代わりのあらびきウィンナー
・翌朝食用 赤いきつね、赤いたまご4つ入り
・飲み物 UCCのドリップコーヒー8杯分
昼は、飯盒でお湯を沸かして、しゃぶしゃぶに。ご飯は面倒なのでおにぎりで済ませて、あとは野菜をということで、グリーンカールなるものを買いました。
おやつ・夜食用は多めに買いました。焼き芋やるからバナナは不要かなぁ、と思ったのですが、使わなければ、持ち帰ってもいいと。
ベイシアでお手洗いを済ませて、車を20分ほど南に走らせると、難なく到着。
時刻は13時20分。受付で現金3000円を支払って、さらに車を50メートルほど走らせると、キャンプサイトの駐車場が見えてきました。14時前の段階で、既に車が4台と大型バイクが1台泊まっています。
ん?
車を止めて、サイトに向かうと入り口の近くの右上のサイトで、2人組キャンパーが焚き火をしながら談笑していました。その後、メインのサイトとなっている奥に行こうとすると……
3人組の若者がキャンプに耽っているのが手前に見えました。大学生くらいでしょうか。
あれ?
しかも、その奥の木がある林間サイトには、2人組のキャンパーと、別のソロキャンパーのテントが1つ立てられています。ここ林間サイトでハンモックもかけやすい場所で人気です。この人気サイトのさらに奥には1段下になったところにサイトがあるのですが、そこでも優雅にソロキャンプに耽る、手練れっぽいソロキャンパーが1人……。
もちろん全員男です。
「ここは人気がないだろうな」と思って行ったら、けっこう多くの人が同じように狙っていて、わりかし殺到してしまっている。勝古沢キャンプ場は、隠れた穴場スポットというよりも、隠れた人気スポットになっているのだと思います。
(実はこの翌週、埼玉県の人気キャンプ場に行ったのですが、それで改めて考え直したことがあります。ここの勝古沢キャンプ場は、やはり穴場的キャンプ場といったほうが適切だったということです。)
ソロキャンプとはなんぞや、ということを改めて考えた
小さいキャンプ場のわりには人が多いので、薪を早めに確保しなければなりません。受付からは、「チェンソー使って薪は自分で作ってください。チェンソーは、多分誰か使っているだろうから、それ借りてくださいね」といわれていました。薪作りスペースは、入り口を通り過ぎて、炊事場とトイレを越えた左側にあります。
薪を斧で作っている熊のような大柄な男性がいたので、チェンソーの場所を聞くと、「チェンソーはそこにあるんです。でも、なんかさっき使っていたら途中で調子悪くなっちゃって……。受付に行くと替えのチェンソーがあるらしいですね」というので、「そうなんですね」といい、とりあえず先にテントを設営するかと思って去ろうとました。すると、「あ、受付に行きます? 行くならこの壊れたチェンソー持っていってくれますかね?」と、チェンソーを渡されました。
納得いかないまま受付に行き、新しいチェンソーに取り替えて戻ってくると、熊は、勝村政信を小柄にして渋さを抜かしたような男と話し込んでいました。「チェンソー、変えてくれましたよ」と熊に話しかけて渡すと、今度は勝村が「僕も使わせてもらってもいいですかね?」と聞いてきます。「…あ、どうぞ」と応えて、自分は先に、テントを張る場所を決めて、設営することにしました。
2人組のキャンパーと、別のソロキャンパーがいたプチ林間スポットが、このキャンプ場の人気スポットのようです。自分はど素人なので、あたふたしたところを他人に見られたくないなと思い、人がいないところを探しました。すると、バンガローがある高台のサイトが誰もいません。
市津湖はまったく見えないですが、誰もいないので、ここにテントを張ることに決めました。
まずは、テントの下に、グランドシート的なものを敷きます。グランドシートは、テントの底面の汚れを防止したり、地面からの湿気を遮断したりするものですね。コールマンの純正グランドシート210W(約190x160cm)は税込3900円。ここは節約を考えて、自分が持っているユタカメイクのグリーンシートOGS-01(ODグリーンシート ♯3000 1・8m×1・8m)を二つ折りにして済ませてしまいます。
その後にツーリングドームSTの設営ですが、以下の「ヒロシちゃんねる」を見て、設営しました。
この日は、めちゃくちゃ風が強かったんですね。あとあと知ったのですが、春一番が吹いたようです。ということで、テントのペグ打ちも念入りに。
前室の箇所には、以前買ったDODのポールを立てて、なんとか完成です。
要領がつかめず、結局1時間ほどかかってしまいました。
時間は15時を回ったところ。この日の千葉県の日没は17時10分。時間がありません。
小走りで先ほどの薪スペースに行くと、僕が持ってきた熊と勝村は消えていましたが、同時に自分が取り替えてきたチェンソーも消えています……。すぐ受付に電話したのですが、「戻ってきていない」とのこと。
か~つ~む~ら~っ!!!!
ということで、誰かがチェンソーで切った丸太の残骸が転がっているのを集めてきて、置いてある斧で、なんとか、薪を作ります。
戻ってくると、自分のテントの右後ろの下段のほうで、大学生でしょうか。5~6人が余裕で入れるどでかいテントが、若者たちの手で設営され始めました。わぁ、こういう人たちにも、人気があるキャンプ場なのか……。これは、夜、うるさくなるんじゃないかなぁ。そう思って、凹みながらも、焚火台・偽物ピコグリルを用意して、着火剤と拾ったスギの葉にマッチで火をつけます。
しかし、薪に火をつけようとしたのですが、煙ばかりが出て、全然火がつきません。しかも、この煙が非常に目にしみる。すぐさま、ネットで、「焚き火」「煙」と検索します。原因は水分とあります。たしかに薪を斧で切っていた際、ちょっと湿っているなぁと思っていました。雨なり地面の水分を吸っていたのでしょう。
試行錯誤しているところに、「どうも~」と男が現れました。戦犯・勝村です。
勝村 あの、さっき先にチェンソー使わせてもらった者です。なんか、引いてきてある電源コードに差しても動かなかったので、炊事場の冷蔵庫のところにあった電源で使ったんですよ。それで冷蔵庫の隣にチェンソー置いておいたので、一応伝えなくてはいけないと思って。
時刻は16時ちょっと前。もう忠告していただいても、役立ちません。早く去ってほしいと思い、「いえ、大丈夫です。お気になさらず」と伝える。
勝村 そうですか。……いやぁ、でも、ここのサイト、いちばんいいんじゃないですかね? 自然も見えて!
ーーそうですかね。でも人気あるのはあっち側のほうですよ(こちらは気にしないでください)。
勝村 僕、そっちのほうで一人でやっているんですよ。一段下がったところで。
あ、これは、さっき見た、手練れソロキャンパーの人だ。
そう気づきつつも、会話を弾ませないために口に出しません。こちらは日没が迫っているので。
勝村 もしかして、先ほど、こちらまで見にきました?
ーーテント張る場所を探していたので、行ったかもしれません(行ったよ! 行ったけどいわないだけだよ!)。
勝村 いやぁ、でも本当にここ、ベストですね! 僕もこっち来ちゃおうかなぁ笑
ーーいやいや!(勘弁してください!) 隣の芝が青く見えるだけで、全然あっちのほうがいいですよ(頼むから来ないでください!)。あっちが人気の場所ですしね(とりあえず早くお引き取りを!)。
勝村 そうですかね。それならこっち来ちゃいます?笑 でもペグしっかり打っちゃっていますよね。
ーーそうですね(余計なことをいわんでください!)。それに、さっき下のほうにグループキャンプをする人たちも来ましたからね(ここには来ないでください!)。あまり静かには過ごせないかもしれません(早く焚き火の準備をさせてください!)。
勝村 たしかにそれは嫌ですね! そういえば、他のキャンプ場って行きました?
あぁ……。これは、完全にコミュニケーションを求めているパターンだ。ソロキャンパー“同志”のコミュニケーションを。
もちろん、余裕があるなら全然構わないんです。だけど、こちとら、ど素人ソロキャンパーで、火を起こすのもままならない状態。しかも日没というタイムリミットが目前に迫っています。なんとしてでも、早急に退散してもらわなければなりません。
しかし、その後、「自分は昨日この近くの牧場キャンプ場に行って今日は2日目」「キャンプ歴は4年くらい」と聞いてもないことを語り始めてきます。「若洲公園キャンプ場に行ったことがある!? どうでしたか?」「ちょっとここ写真撮ってもいいですか?」と、さんざん居座り、満足いくコミュニケーションを取れたのか、やっと退散してくれました。
時刻は16時半過ぎ……。もう、薪から火を、なんて甘っちょろいこといっている場合ではありません。車に積んでいた余っていた炭を持ってきて、薪の中に投入します。
が、しかし、火が全然安定してくれません。
そして17時10分が過ぎます。
もう本当にヤバいです。そこで邪魔な濡れた薪を全部どかして、炭だけにします。で、気づいている人もいるでしょうが、昼もおやつも食べていません。そこで、お昼に飯盒でしゃぶしゃぶをして食べるはずだった豚肉を、ダイソーのイモノステーキプレートで焼きます。しかし、火が弱いのか、焼くのにすら、とても時間がかかっています。この後、湿ってなさそうな薪を少し投入したり、着火剤を新たに入れたり、として、なんとか炎を成長させようとするが、うまく行きません。
そして、ワンパック全部の豚肉が焼けたときには、18時をゆうに超えていました。
夜のとばりが下り切った中で、豚肉と冷たいおにぎり2つを胃袋に掻き込みます。温かい飲み物が欲しかったのですが、コーヒーの元はあっても、焚き火の火が弱くて、お湯がまともに作れません。口の中に唾をためて、ごくんと飲み込みました。遠くを見ると、勝村のテントのあったあたりで、焚き火の炎が綺麗に揺らめいています。自分のわずかな炭の火は、完全に消えてしまいました。
いや、わかっています。全部、自分が悪いんですよ。
勝村に帰ってほしかったら、「すみません! ちょっと今時間がなくて、キャンプも素人なもんで、焚き火を起こすのにいっぱいいっぱいなんです」と、いわなければならなかったわけです。チェンソーの返却の件だって、「僕は先にテント立てないと、間に合わないので」と断らなければなりませんでした。そういった対応含め、ソロキャンプなわけですから。
それを、「ど素人キャンパーと気づかれたら嫌だな」「心が狭いと思われたら嫌だな」と思って、もじもじしてしまった結果が、これなんです。
テントの中に入って、寝袋に包まれた状態で、シュラフカバーを上から取り付けます。あとはホッカイロをインナーのTシャツにつけて、頭から寝袋に潜り込みます。
「あ! これは暖かいぞ!」
シュラフカバーもおそらく買って正解でした。ただ、テントを設営する場所が失敗しているのに気づきました。ここ、少しだけ斜めになっている場所だったんですね。このくらいは問題ないかな、と思って張ったのですが、少し斜めなだけでも、寝ていると体重が一箇所に集中してうまく寝つけません。火が落ちた中、100円ショップのランタンの光だけでペグを打ち直すのは、正直しんどい。煙くさくなったコートをたたんでマットの下に敷いて、なんとか調整します。
かなり早い時間帯ですが、やることがありません。本当はここで、小説のゲラチェックをしようと思っていたのですが、こんなテンションでは手につきません。腹が空いたので、おやつとして買ったフィッシュアーモンドやいかくんや貝ひもをむさぼったり、バナナをかじったりして、なんとか時間を過ごします。
そして、そのまま、夜を越えました。
あ、グループで来ていた若者キャンパーたちなんですが、夜もすげー静かでした。
いい子! めっちゃいい子! 悪いのは自分だけ!
(文・写真/中野一気)